【北海道】えんべつむかしがたり~最奥地の集落に残る“念仏峠”の話~

 
 
 

念仏峠

今は誰一人住んでいない、正修という地

こんにちは。ちい記者のはらちゃんです。北海道の道北地域、遠別町でNPO法人えんおことして地域づくりの活動をしています。今回お伝えするえんべつむかしがたりは、遠別町の中心から40㎞程離れた集落、正修にある念仏峠のお話です。

中心街から山に向かって車を走らせます。遠別町は日本最北端の水稲の地域ということもあって水田や畑といった田園風景が広がる道の両側。次第に鬱蒼と茂る木々が目立ち始めます。道路に積もる落ち葉を踏むと聴こえる小気味よい音。秋にこの道を走るのが個人的な楽しみの一つです。

昭和43年の集落解散以降、この地に人は住んでいません。当時は今と違って道路も整備されておらず町までの距離も遠く、冬には3mもの積雪がある自然環境ともに過酷な地域。そんな地域で生きた人たちの苦労と救いを感じることができる民話があります。

 

秋の正修へと続く道

念仏峠に伝わる民話(えんべつ 民話と伝記より引用)

正修から遠別市街まで買い出しに出るのにも往復3、4日がかりの大変な道のりです。食物や日用品をリュックサックいっぱいに買い込み家路につくのですが、途中東遠別の知り合いに一晩泊めてもらい、次の日に帰路についたのです。

ながい道のりです。長三郎どんは時折生まれ故郷の民謡を口ずさみながら念仏峠に差し掛かるころには日暮れ。秋も深まっており、風も路傍の枯草を騒がせて薄気味の悪い峠です。

今にもクマが出没しそうな気配で背筋のあせも冷やかに伝わり恐怖感が走ります。長三郎どん、たまりかねて「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏…」と無心に念仏を唱え続けました。もう恐ろしくて口の中が乾くほどです。

時間が止まるのを感じながら峠の真っただ中に差し掛かるころです。前方にご灯明のような灯影が浮かんでいます。よく見ると「仏様」です。

仏様は「おいで、おいで」と手招きしているではありませんか。長三郎どんは勇気百倍。「ありがたい、ありがたい。」と心の中でつぶやき、周辺の山々に響き渡るほどの大声で念仏を唱え、仏様を追って走りました。

長三郎どんは正修部落の人たちにあの峠を通るときには「南無阿弥陀仏」と念仏を唱えれば仏様が道案内してくれて無事峠を越えることができることを教えました。その後、大成地区と正修地区の人たちは必ず念仏を唱えて通るようになり今でもこの地域の人たちは念仏峠の仏様を信じています。

 

朝靄に包まれる正修

人がいなくなっても場所は残り続ける

ここ最近、天気の良い日は早朝に正修地域へ写真撮影に出かけています。人が住まなくなったこの地域ですが、クマの糞を道路の真ん中で発見したり、生まれて初めてギンギツネを見かけるなど野生動物はにぎやかに暮らしているようです。

 

クマの糞

この正修のように集落から人がいなくなることは、≪不便な地域から便利な地域へ≫という自然な動きだと理解していますし今後もそのように移り住み、解散する集落はどんどん増えるということも容易に想像がつきます。

ただ、「人がいなくなること=場所そのものがなくなる」というわけではありません。幸い、私は写真撮影が趣味なので正修をはじめ遠別の様々な場所へ足を運びます。写真として残すこと、その集落を知り、伝えていくことを今後も少しずつ進めていきたいと思います。

 

遠別町最奥の民家

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