【山梨】養蜂家のおじいさんから学んだ、ミツバチと人と里山の密な関係性

 
 
 

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山梨県北杜市で活動する増富BASEの西川です。

梅雨ですね、みなさん、いかがお過ごしでしょうか?山に四方を囲まれた増富は、一雨ごとに木々の緑が深くなってきました。田んぼの稲はすくすくと育っています。

 

はちみつ絞りの朝は5:30の集合から

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先日、増富の日影地区に住むおじいさんのお手伝いをしてきました。何をしたのかというと「はちみつ絞り」です。

増富では昔から、養蜂が盛んに行われていました。今ではその担い手も徐々に少なくなり、有休農地の端っこに養蜂の巣箱がぽつんとおかれていたりします。

そんな数少ない養蜂家の一人が、私たちの畑の隣の畑でいつも精を出しているおじいさんです。

昨年から、「一度手伝ってくりょーし」と言われ続け、なかなかタイミングが合わずにお手伝いできなかったのですが、念願かなってのお手伝いです。

集合は日影のバス停に朝5:30。日影からは一山超えたところにある、御門という集落に向かいました。

そこに、おじいさんが飼っている蜂の巣箱があるそうで、そこではちみつ絞りをするということでした。

 

蜂と触れ合うための服装と持ち物は意外にも軽装だった

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・麦わら帽子
・汚れてもよい格好
・上着にはレインコートが最適
・ゴム手袋

だけでした。

ん?テレビでみたことのあるような、真っ白な防護服が渡されるのではないの?

カッパでいいってこと?げげ・・、刺されないの?

これはこれは、かなり不安です。

 

 

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そして朝。

おじいさんとその親戚のおじさん、そして我々の4人は日影のバス停で落ち合いました。

丁度、お世話になっている猟師さんがお散歩中。ご挨拶して、巣箱のありかに向かいます。

到着すると、わぁ、こんなに沢山!?

巣箱が並んでいます。ざっと、5・60はあるでしょうか。2時間くらいで終わると言われていたんですが、とても終わりそうにない量です。

まず、おじいさんに、蜂よけの顔面をガードするための網を渡されました。それを麦わら帽子の上から装着、隙間から蜂が入って来れないようにセットします。

他は心配していた通り、全て自前のもの。養蜂用に用意された防護服でも何でもない格好で、不安の中、作業が始まりました。

 

いよいよ、大量のミツバチとご対面

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おじいさんの軽トラックの中から遠心分離機を出すなど、道具をセット。そして、おじいさんは火を燃し始めました。

名前はわからないのですが、ミツバチを煙でおとなしくさせるための道具に火がついた炭をセットします。巣箱を縛ってあった紐をほどいて、いよいよミツバチとのご対面です。

煙を吹きかけながら、巣箱の中から、巣枠(ミツバチがハニカムをつくるための枠)を取り出そうとすると、巣箱の中から大量のミツバチが!

さすがにひるんでしまい思わず退散。かなり恐怖を感じました。ちょっと遠くからその様子を伺うことにした私。情けないですけど、本当に怖かったです。

 

ミツバチが作り出す美しいハニカム

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ベテランのおじいさんとおじさんが巣枠を取り出し、遠心分離機の近くまで持ってきます。その巣枠にはミツバチが作ったハニカムと、その中にたっぷりの蜂蜜が!

ただし、ハニカムの表面はミツバチたちがが蜜蝋で固めてしまっています。それを取り省かないと、遠心分離機にかけても、
蜂蜜はとれません。そこで、専用のナイフで蜜蝋を取り省かねばなりません。その作業がこれがまたかなり大変!

巣枠にはミツバチがついていて、専用の刷毛で優しく追い払ってから、ナイフを蜜蝋に当てます。最初はうまくできず、おじいさんに何度も指導をうけます。

「ほれ、おじいさんのをまずみろし」

うん、何度もみてます。でも、見てすぐにできるわけじゃない・・。

「ほうさな、おじいさんはもう60年もやってるだよ。あんたらがうまくできたら、おじいさんは困るら!」

おじいさんのその言葉にちょっと安心しながら、ひたすら蜜蝋を削ります。

 

全て手作業の蜂蜜絞り

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削っては遠心分離機に入れ、くるくるくるくる回します。

遠心分離機に入れるにも入れ方があって、なかなか難しい。さらに、巣枠は同じ巣箱に戻すため、他の巣箱の巣枠と混ぜてしまってはいけない。

巣箱はミツバチたちの家です、他のミツバチが作ったハニカムを、誤って別の巣箱に入れてしまうと、ミツバチたちは戦争を始めます。

そして、死んでしまうのです。

巣箱は二重構造になっていて、下部に女王蜂や蜂の子が入る部屋があります。上部にある巣枠には、ハニカムがつくられ、
そのなかに蜂蜜をためる。

ところが、中には上部にも蜂の子が入っているケースもある。

「ここはな、蜂の子が入っているら。削らんようにな。削ってしまったら死んでしまうから」

おじいさんは蜂の子は大切に扱います。

遠心分離機はもちろん手動。これを回すのは本当に一苦労、かなりの重労働です。汗を流しながらの作業、それでも思うように蜂蜜がでてこない。

少し肌寒い朝だったこともあり、蜂蜜も堅い状態だったようなのです。がんばってぶんぶん回していましたが・・。

「そんなもんでいいら。あんまり絞りすぎると、ハチががっかりする」

はっとしました。ハニカムの中に残っている蜂蜜を、とてももったいないと思っていた。でも、それでもいいとおじいさんはいいます。ハチががっかりするから、それくらいでよいと。

 

養蜂家から学ぶミツバチとの協働関係

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絞れば売れる、はちみつです。特に、おじいさんのはちみつは増富では有名で、観光客の人がわざわざ買いにくるほどです。お金になるなら、できるだけたくさん採る、私はそういう頭でした。

でもおじいさんは、違いました。

確かに養蜂家、蜂蜜を売って暮らしています。

でも、ミツバチを大切にし、一緒に暮らしているのです。できるだけ、巣を壊さないようにし、できるだけ、ミツバチも殺さないようにする。

ミツバチは、1年に3回か4回程度、絞ることが出来るそうです。ですがおじいさんは、年1回しか絞りません。

蜂蜜を絞るためには、少なからずミツバチの巣を壊すことになります。

年に3回も絞れば、その度にミツバチは巣を補修しなくてはならない。それが1回なら、まだミツバチにとっても、ダメージは少ないでしょう。

「ハチに蜜をわけてもらっている」

おじいさんはそういうスタンスなのです。

右肩上がりの経済成長が当たり前の社会で生活する私たちが、すっかり忘れてしまっている大切なこと。おじいさんの言動に、胸が打たれました。

おいしい蜜をありがとう、ごめんね、せっかく君たちが作ったものを、よこどりしちゃって。

そんな風に思いながら、蜜蝋をとり、遠心分離器を回しました。だんだん、ミツバチが可愛く見えるようになってきました(笑)。

実際、なかなかかわいいんです。

もこもこした毛に覆われた丸いフォルム。しかも、蜂蜜の匂いに誘われすぎて、自ら蜜に溺れてしまうミツバチも。

蜂蜜を絞るということは、ミツバチを犠牲にすることなんだなとも思いました。だからこそ、ミツバチのことを考え、蜜をわけてもらっているという感覚を忘れていはいけないのでしょう。

最初、とても不安を感じていましたが、一度も刺されませんでした。

不思議なことに、ミツバチと一緒に何か作業をしているような気分になりました。刺される、という恐怖感はなくなり、美しいハニカムをつくるミツバチのことを尊敬する気持ちになりました。

私たちがお手伝いした蜂蜜は、アカシアの蜂蜜です。増富にはアカシアの花がたくさん咲いているんです。何とも言えない、花の香りが蜜からはします。

そして驚いたことに、蜜がついたゴム手袋を水で洗うと、さっととけるのです。着ていたレインコートはベトベトになったの
ですが、水で洗うとすぐにキレイになりました。

 

本物の味を、東京の人にも味わってほしい

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遠心分離機から出てくる絞り立ての蜜。とても綺麗な色をしています。

「わぁぁ!」

と歓声を上げていたら、おじいさんに

「ほれ、なめてみろし!」と。

じゃあ、と遠慮しつつ、出てきたばかりの蜜を指で受けてペロリ。

「!!!!!!」

おじいさんのはちみつは、実は食べたことがありました。なので美味しいのはとてもとてもよく知っていたんですが、
それでも絞りたてはさらに美味しかった!今まで食べたことがない、そんな蜂蜜です。

「ほれほれ、もっとなめろし〜!」

おじいさんは嬉しそうに言ってくれました。

「東京の人にも食べてもらいたいだよ。本物の味をしってもらいたいだよ。本物の蜂蜜の味は、ちがうずら?」

ああ、これをもっと知ってもらいたい。おじいさんがミツバチと協働してつくったこの蜂蜜を、日本全国の人に知ってもらいたい。食べてもらいたい。

 

ただ、モノが売れれば良いわけではない

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ぜひ、みんなに考えてもらいたい。

「売れる」「利益を上げる」ということだけを最優先して蜂蜜を採ろうとすると、巣を壊したり多くのミツバチを犠牲に
することになる。不純物を入れて、安く大量のものを売ろうと考える人もいるでしょう。

利益さえ上がればそれで良いと考えると、大量生産・大量消費は正しい。しかし、それが本当に長続きするあり方なのでしょうか。

おじいさんたちのように、ミツバチを大切にし、ミツバチと共存しながら、ミツバチに蜜をわけてもらいながら、それを生業とする。

ミツバチに無理をさせないから、またその翌年も品質のよい蜜を採ることができる。そしてその品質のよい蜜は、人の健康をも支えます。

増富での養蜂、本当に担い手が少なくなってしまいました。私たちは、なんとかそれを受け継いでいきたいと考えています。

実は今、ミツバチは危機に立たされています。個体数が減少してきているんです。

農薬や野菜の品種など農業のあり方、自然が失われつつあるなど、その原因はいろいろと言われています。

少なくとも、人間の影響であることは明らかです。そしてこの問題は日本だけにとどまらない。世界中で起こっているのです。

 

養蜂が里山保全活動に繋がる!?

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「養蜂もやってみればいいじゃん」

後日、おじいさんの息子さんに言われました。

「アカシアの木を植えながらね、ミツバチを飼ってみたら?」

「え?」

アカシアはただ自生してただけではないようなのです。ミツバチのために花を育てること、環境を整えること。
それも養蜂家の仕事。

ああ、そうか、と、気がつきました。個体数が減少しつつあるミツバチを守ることもまた、里山の保全活動につながるのではないかと。

我々の先人たちが時間をかけて自然と共生し、育んできた豊かな里山。今じわじわと失われつつあります。後継者がいないからです。

増富で昔から当たり前のように続けられてきた養蜂。それをきちんと受け継ぎ、そして豊かな里山を次の世代に残すこと。

私たちのすべきことがまた一つ、見つかりました。

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